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クリント

クリント・イー〇トウッドと一緒に仕事をしたとき、他とはちがった爽やかな空気が流れていた。たぶん、何十年と一緒に仕事をしてきたチームメンバーもいる中、現場での安心感や信頼感があるのかもしれない。 そんなスタッフもみんな気さくで楽しくていい人ばかり。 いろんなところで優しさがみれたし、プロ意識もとげがなく、スムーズで余裕がある。

ある監督は、撮影のときに自分のモニターのまわりに黒幕をはり、自分の世界にはいって撮影を離れたところで見守る。 でも、クリントは違っていて、自由に持ち運べる携帯モニターを持つことも多く、黒幕に隠れるどころか、俳優のすぐ近くにいることが多い。 「アクション!」という掛け声もないこともなかったけれど、静かな声で、「Go ahead.」(どうぞ)というのも何度もあった。 俳優に対しての指示は少なくて、俳優にとっては「信頼されている」という自信にもつながる。 

ある人が言ってた。いい監督は俳優の演技を生でみる。そうでない監督は離れたところでモニターをつかって演技をみる。 

でも、リハーサルが現場以外でなかったのにはびっくり!謙さんとは他の日にあったのか知らないけど、そのほかのキャストとはリハーサルもなし、打ち合わせもなし。すべて現場でカメラを前に少しの指示だけ。 それで空気を読めてしまう俳優の方々もすごいと思う。 そして面白いのが、カメラがまわっている間にも演技の指示をする。 もちろん、編集のときに監督の声は消すんだけれど、それも早く終わるポイントだと思う。 

現場では謙さんのトレーラーへ他の日本人俳優が呼ばれて、そのシーンの打ち合わせや小さなリハーサルのようなこともしていた。 その意味ではあの映画は謙さんの努力と情熱の賜物でもある。 私に言わせると、監督のクレジットはクリントと一緒に謙さんにもあっていいような気もする。 撮影中も時々、日本人俳優へ謙さんから演技の指示が入ったりしていた。 すべて台詞が日本語の映画を日本人にもおかしくないように作るには、やはり現場の日本人スタッフが小さいところまで気を使う必要もあった。   

クリントは、現場ではスタッフのみんなと一緒にご飯を食べる。 みんなと同じ列に並んで(まぁ、お魚料理が好きな彼はキッチンの裏から特別に料理をもらうこともあったけど)、自分の好きなものを自分でお皿に盛り、途中でお話などしながら、食事用のトレーラーへ行く。 そのトレーラーには、大きなプラスチックの長方形のテーブルとプラスチックの硬い椅子が並べられて置かれ、どこに座ってもいい。 俳優さんたちは自分用のトレーラーで食べることが多かったけど、クリントは違った。 

ホントに近寄りやすい、普通のおじいちゃん。 (今年で80歳!) でも、他の人と違う爽やかな空気が彼のまわりにだけ流れている感じ。 懐かしさを感じさせる、ゆったりとしていて、自信のある、アメリカの田舎町にあるような、あの風のような・・・。 

そして彼はスタッフに声をかけて感謝の言葉を忘れないし、笑顔で挨拶もする。 私にも気を使って声をかけてくれた。 スタッフからの信頼があるのもそれがあるからだと思う。     

撮影が長引くことは殆どなく、予定よりはやく終わることがあったほど! これが撮りたい!っていう執着心よりも、何かもっと深いものを空気の中に探していて、それが撮れたら次へ進むという感じだろうか。 台詞ではない、俳優の魂を見て、そこに「本物」があったら監督としてはOKということのようだった。 

クリントと一緒に仕事をして監督としての彼を学びたい!と本気で思ったら、本当に一緒に仕事ができてしまった。 誰でも[本気]で何かをやりたいと思ったら叶うものであるとつくづく思う。 自分の性格かもしれないけれど、本気でやれば何でもできるという自信がなぜかある。 たぶん、小さいときからの両親からの期待と信頼があったからだと思う。 茂木健一郎氏の言う「根拠のない自信」がいろいろなところでいい方向へ発揮できているのは、両親のお陰であるところが多い。 心から自分を信じてくれる人がいる人は強くなれる。  

根拠のない自信でもいい。 いろんな人に夢をもってほしい。 希望をもってほしい。 夢は実現するというのを知って欲しい。 そして、自分の大事な人が本気で夢へ向かっているときは、信じてあげて欲しい。 そんな気持ちも含め、このブログも書いている。      


     

次のハリウッドでのお仕事

次のハリウッドでのお仕事はオリ〇ー・ストーン監督のところで。 

プロデューサーのダグのところへあるプロジェクトのミーティングでよく来ていた彼は、何を思ってか毎回2階にあった私のオフィスへ来てご挨拶。 リサーチが気に入ってもらえたようです。 20代後半になってまだまだこんな仕事やっててどうしよう!と話していたら、監督は自分がその頃はまだまだだった。自分のペースで進んで行ったらいいんだよって助言してくれました。 

その数ヵ月後、監督の会社へ転職。 学生のころ観た「ナチュラル・ボーン・キラーズ」や「7月4日に生まれて」「JFK」「プラトーン」などなど、大尊敬していた監督と毎日顔をあわせる・・・。奇跡としか言いようがありませんでした。 みなさん、奇跡は起こります。 熊本のど田舎から出てきた私が、ハリウッド映画をつくる監督のもとで修行ができてしまったんです。 必ず夢は叶います。 

本物と仕事がしたい。 

そんな気持ちで突き進むとこういうことになるわけです。 

あの頃は燃えてました。毎日。 寝るのも惜しまないくらい作品のリサーチをし、「この映画で世界中の人にメッセージを伝えられる。役に立つことができる!」と思ったら、本当に眠れませんでした。 というより、寝るのがもったいない気持ちでいっぱいでした。人は使命感が生まれると、こんなにも変わるんです。 

平日週末、朝昼晩と関係なくかかってくる監督からの電話。「今日はどんな課題があるんだろう!」とドキドキものでした。 

当時はサンタモニカにあったオフィスと監督の家。ビルの最上階にあったオフィスからの景色は、サンタモニカのビーチが広がっていました。 家は離れにオフィスがあって、ワインレッドのブーゲンビリアがびっしり屋根にあり、とても幻想的な空間。 私も将来こんな家が欲しいなぁと思ったものでした。 


初めてのハリウッドでのお仕事

最近思うこと。私はいったいアメリカで何をしてきたのか? 

高校のころ、校長先生が「本物から学になさい!」っていつも言ってました。その頃は本物に触れるということがどんなことなのか、さっぱりわからず、というよりも本物を見分ける力もありませんでした。

アメリカへ渡り、演劇と映画を勉強して、いざ働くとなると、やっぱり本物の近くで学んでみようという気合で、アカデミー賞で最優秀作品賞映画『グラディエーター』をプロデュースしたダグ・ウィックの元で修行することにしました。

なんと厳しい日々だったことでしょう。 夜誰もいないオフィスで続ける仕事。初めての業界での仕事だったので、不慣れなこともあったのか、まだ言葉の壁があったのか、何にでも一生懸命に取り組んでいました。 

でも、そこでいろんな人に会いました。ハリソン・フォード、ブラッド・ピット、キャメロン・ディアス、サム・メンデス監督、オリバー・ストーン監督などなど。名前を出したらきりがありません。 スピルバーグ監督の脚本ノートを読んで勉強したり、リサーチを彼に提出したり、脚本家の脚本の下書きをみて書き方を学んだり、脚本の手直しをしたり。 

夜の映画スタジオは不思議な場所でした。オフィスから駐車場までいろんな巨大倉庫のような撮影スタジオの間を歩くのですが、夢を膨らませていたのを覚えています。 ここで、メン・イン・ブラックが撮影されたのかー!ここでスパイダーマンが撮影されていたのね!ここでフックが撮影されたんだー!などなど。建物には白黒時代に有名だった俳優の名前がつけられていて、ジミースチュワート・ビルディングなどもあったりして夢の続きのようでした。 

あるビルにはオスカー像が飾られていて、ラスト・エンペラーなどの私の大好きな映画だったので横を通るたびに感動していました。 その当時の会長はエイミー・パスカル。 彼女がある業界雑誌で言っていた言葉が「どんな仕事でもいいから、尊敬する人のそばで働きなさい。すると予想以上の自分の成長が望めるから」とありました。 私がやってることだ!と思って励みになったことを覚えています。 

自分が信じる道を進む。 どんな仕事でもいいから、自分がそれを信じる一歩になるなら、自分の夢への一歩になるなら・・・。 本物の近くで働く! そんな気持ちで働いていた日々でした。 




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